2014年11月 4日 (火)

「戦争死者慰霊の関与と継承」研究プロジェクト第7回研究会を開催しました。

「戦争死者慰霊の関与と継承」研究プロジェクト第7回研究会

「慰霊するモノと人びと――海外戦没者をめぐる記憶のエージェンシー」

共催:戦争社会学研究会・関東例会

科研費基盤研究B「連合国のアジア戦後処理に関する宗教学的研究――海外アーカイヴ調査による再検討」(研究代表者:創価大学中野毅)

日時:2014111日(土)13:00開場、13:3017:40

場所:東京大学本郷キャンパス法文1号館1階113教室

 

P1060615_3 今回は、戦争社会学研究会・関東例会及び中野毅先生の科研プロジェクトとの共催で行われ、あいにくの雨天にもかかわらず様々な分野から35名ほどの参加者が足を運び、盛会となった。まず、中野先生より開会の挨拶が行われた。

○趣旨説明(西村明・東京大学大学院人文社会系研究科准教授)

 まずは、西村氏が、海外戦没者をめぐる慰霊の担い手としての「第三者」(遺族や戦友などの戦没者と直接の関係を有する者以外の人々や慰霊碑・仏像などのモノ)に着目する視座を提起し、自身のフィールドワークにおける事例の紹介や、社会学等の先行研究における位置づけを行った。

 

()「可視化された海外戦没者――遺骨収集団の派遣再開をめぐって」

(浜井和史・帝京大学総合教育センター専任講師)

P1060622_2  今春『海外戦没者慰霊の戦後史』を出版した浜井氏は、「1950年代で「概了」とされた政府の遺骨収集の取組みが1960年代にどのように再開されたのか」という問いに対し、外交史の分野から諸史料を検討し、海外渡航の自由化を契機とする「体験としての海外戦没者の可視化」が大きな役割を果たしたという指摘を行った。また、靖国国家護持法案を巡って対立していた自民党と社会党が遺骨収集の推進に関しては共通の関心をもっていた等の興味深い事実が報告された。最後に、今後の研究課題として、遺骨収集事業の「区切り/再開」をそれぞれ求める政府や遺族等のメンタリティに対して宗教学・民俗学・社会学などからアプローチする可能性や、日本側史料だけではなく現地政府・住民の視点を取り入れた多元的検討の必要性に言及した。


()「戦没者慰霊と観音菩薩像――山崎良順の事例を中心に」

(君島彩子・総合研究大学院大学日本歴史研究専攻博士後期課程)

P1060642  芸術学をバックグラウンドとする君島氏は、戦没者慰霊のために発願された観音像という対象に着目した研究を試みている。今回は、僧侶でありながら殺生に関わる従軍を経験し、戦後は戦没者慰霊と平和祈願のために数多くの平和観音像を国内外に贈った山崎良順をとりあげ、その活動や思想を詳細に報告した。この事例研究から、発願者/製作者/宗教者/参拝者という複数の主体が関わり合いのなかで様々な主体の思いや記憶を繋げる平和観音像というモノを研究することが戦没者慰霊に貢献する可能性を示したといえるだろう。

 

() 「死者と生者を結びつける人々――パプアニューギニアにおける戦地慰霊と旅行業者」

(中山郁・國學院大學教育開発推進センター准教授)

P1060649  修験道などを専門とする宗教学者の中山氏は、近年精力的にフィールドワークを行ってきたパプアニューギニアにおける戦没者慰霊を題材に、旅行業者や添乗員、在留邦人などの戦争と直接関わりを持たない人々が、戦没者慰霊団との共感的関わりや知識学習のなかで傍観者から記憶の継承者(エージェント)へと変化し、生き残りの戦友に代わって慰霊団にとっての「先達」の役割を務めるようになる現象に着目する。そして豊富な事例紹介から、慰霊巡拝は、単に霊を慰めるというだけではなく、戦友や遺族などがネットワークを形成する場としてのネットワーク機能や、継承者を生み出す場としてのリクルート機能を持っていることを明らかにした。

 

○ディスカッサントからのコメント(粟津賢太:南山宗教文化研究所研究員)

以上を踏まえて、宗教社会学者の粟津氏が、全体的なコメントとして、今回の企画をこれまでの戦没者慰霊研究の流れに位置づけ、エージェントの対概念としてのペーシェントpatient概念や集合的記憶概念に言及しつつまとめを行い、各報告者へ個別の質問やコメントを投げかけた。その後、フロアからも次々と質疑がなされた。報告を踏まえて、世代変化、遺骨への執着、トランスナショナルな慰霊の可能性、戦後処理といったトピックをめぐる議論が展開され、鋭くも有益な批判も寄せられた。最後に戦争社会学研究会代表の野上元氏が、多面的な戦争という対象を捉えるために様々な分野を突き合わせて取り組むことの重要性を確認して幕を閉じた。

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研究会後に設けた懇親会にも20名を超える参加者があり、様々な出会いや交流、さらなる議論が展開される賑やかな場となった。

 

(清水亮・東京大学大学院人文社会系研究科社会学研究室M1

2014年9月23日 (火)

「戦争死者慰霊の関与と継承」研究プロジェクト第7回研究会

下記の要領で、第7回研究会を開催します。ご関心のある方はぜひお参集ください。
(共催:戦争社会学研究会・関東例会、科研費基盤研究B「連合国のアジア戦後処理に関する宗教学的研究―海外アーカイヴ調査による再検討」(研究代表者:創価大学中野毅))
「慰霊するモノと人びと――海外戦没者をめぐる記憶のエージェンシー」
本シンポジウムの主題は、従来の戦死者慰霊の研究の中では十分論じられることがなかった、戦後の海外戦没地における慰霊や遺骨収集等、海外戦没者をめぐる記憶の為された方、作られ方である。その際、誰が記憶し、慰霊を成り立たせているのかということを照射するために、第三者のチカラを見据えた議論を行う。この場合の第三者とは、戦没者と直接の関係を有する遺族や戦友以外のさまざまな立場から関わる人びとや、慰霊碑や仏像等のモノを指している。文献調査と現場調査による成果の両面から、海外戦没者をめぐる状況の立体的理解を目指したい。
日時:2014年11月1日(土)13:00開場、13:30~17:40
場所:東京大学本郷キャンパス法文1号館1階113教室
日程:
13:00               開場
13:30~13:40 開会挨拶(中野毅:科研研究代表者・創価大学文学部教授)
13:40~13:55 趣旨説明・登壇者紹介(西村明・東京大学大学院人文社会系研究科准教授)
13:55~14:30 浜井和史(帝京大学総合教育センター専任講師)
  「可視化された海外戦没者―遺骨収集団の派遣再開をめぐって―(仮)」
14:30~14:40 休憩(10分)
14:40~15:15 君島彩子(総合研究大学院大学日本歴史研究専攻博士後期課程)
  「戦没者慰霊と観音菩薩像―山崎良順の事例を中心に―」
15:15~15:50 中山郁(國學院大學教育開発推進センター准教授)
  「死者と生者を結びつける人々―パプアニューギニアにおける戦地慰霊と旅行業者―(仮)」
15:50~16:05 休憩(15分)
16:05~16:25 ディスカッサントからのコメント(粟津賢太:南山宗教文化研究所研究員)
16:25~17:30 コメントへの応答とフロア・ディスカッション
17:30~17:40 閉会挨拶(野上元:戦争社会学研究会代表・筑波大学大学院人文社会科学研究科准教授)
なお、18:30より会場近くで懇親会を設けます。ご参加希望の方は、当日会場にて受付をします。
問い合わせ先:西村明(東京大学文学部宗教学宗教史学研究室、aquillax@gmail.com
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2014年3月29日 (土)

第6回研究集会のご報告

「宗教と社会」学会研究プロジェクト「戦争死者慰霊の関与と継承」研究会

・國學院大學研究開発推進センター研究事業「昭和前期における神道・国学と社会」

2014年3月16日14:00-18:00

國學院大學学術メディアセンター棟会議室06

 

報告者:

鈴木卓(米デニソン大学)「記憶創りの旅路-民間人引揚者と戦死者遺児にとっての北マリアナ諸島」

西村明(東京大学)「戦地慰霊・遺骨収集をめぐるパフォーマティヴ・メモリー―金谷安夫氏の8ミリ作品「姿なき墓標」(テニアン、昭和51年)、「草むす屍」(サイパン、昭和59年)の上映とともに

コメンテーター:中山郁(國學院大學)

司会:粟津賢太(南山大学)

 

 鈴木氏の報告では、2013年度の国際交流基金日本研究フェローとして東京大学への滞在期間に、沖縄・滋賀・北マリアナ連邦にて行った調査成果が紹介された。

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 まず、沖縄ではサイパンやテニアンなどの北マリアナ諸島からの帰還者たちが、現地への巡拝を通じてどのような集団的記憶を形成しているかについて、5点のポイントに整理した。当日配布のレジュメに沿いながら、多少翻案して紹介すると、1.戦争による死者の記憶の共有が帰還者の記憶の共同性を担保していること、2.現地への慰霊墓参が先祖崇拝の一環として行われていること、3.引き上げ後の沖縄社会での蔑視といった疎外の経験が、南洋へのノスタルジアと集団意識(時に外の世界を知る優越感)の形成の基礎にあること、4.墓参を通じて共同性が維持・強化されていることと、集団的記憶の形成に社会経済的要因も影響していること、5.世代間継承については、各家レベルでは若年世代の意識の希薄化が見られるなど個別化の傾向があるのに対して、帰還者会としては記憶の継承事業に着手するなど公的なレベルでは拡散化の傾向が見られること、の5点である。

 

 他方で、滋賀県遺族会の遺児たちの慰霊巡拝の事例についても、5点のポイントが示された。1.長男・跡継ぎとして恒例の母の代理としての参加意識など、イエ制度の中で慰霊巡拝の意味が捉えられていること、2.同時に、現地での慰霊祭などの呼びかけで家族にとどまらず故郷の近況を死者に報告するなど、地域、市町村の代表としての意識も表れていること、3.経済的状況などから巡拝が希少な海外旅行の機会とみなされていること、4.若年時の経済的苦労や就職差別などに起因する鬱屈した心情など共通した境遇によって巡拝参加者の遺児同士の一体感がもたらされていること、5.他方で、旅程の制約などもあって現地住民との過去と現在に関する無関心や接触の希薄さが見られること、5.物理的距離の接近に伴って、心理的距離感の変化や現地での霊的体験などが見られること、などが提示された。

 

 最後に、今後の議論の精緻化の上で有用な理論的枠組みとして、A.集合的行為としての記憶・想起、B.トランスナショナルな記憶の形成、C.集団による「旅・移動」としての慰霊巡拝が生成・保持する集団的記憶と記憶の共同体のアイデンティティの諸点について、紹介・説明がなされた。

 

 

 続いて、西村が報告を行った。表題に掲げたパフォーマティヴ・メモリー(行為遂行的記憶)という概念は、そもそも報告者が2006年の著書で慰霊の分析概念として提示した「フルイ」を翻訳・翻案し理論的に説明するために提示したものであった。過去の事実のたんなる確認や保持に止まらず、未来への志向性を有し,生者を歴史の主体として未来に向けた行為(問題の解決プログラム)へと駆り立て,新たな歴史の地平へと参入させるダイナミックな働きを持つということが同書における当初の意味合いであったが、記憶行為そのものが演じるパフォーマンス性にも注目することで概念の射程が拡がり、戦地慰霊、遺骨収集、仏像造立、橋の建設、映像制作・インターネット配信など、慰霊現象に付随するさまざまな行為実践への視野が開かれると指摘した。とくに映像制作については、『中外日報』の慰霊関連記事の集成結果から、1970年代に新宗教教団や仏教宗派等による映像記録の試みが散見され、こうした資料発掘が今後の課題になると論じた。

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 その後、映像制作の例として、テニアン戦の生還者である金谷安夫氏の8ミリ映像について、略歴や制作にいたる経緯などとともに紹介し、数本ある8ミリ、ビデオ作品の中から、1976年(昭和51)にテニアン島で撮影された自伝的ドキュメンタリー『姿なき墓標』と、1984年にサイパンでの厚生省遺骨収集事業に参加した際に撮影された『草むす屍』を上映した。

 

 これらの報告の後、コメンテーターの中山氏より、いくつかの疑問点・論点が提示された。たとえば、遺骨収集・戦地慰霊関連の映像・画像資料のアーカイブ化を早急に試みなければ今後残らない可能性があること。パフォーマティブに慰霊を繰り返す人と一回の実施で満足する人との差異があり、前者は慰霊の新たな組織化などでキーマンとなっていく傾向があること。記憶の継承といった際に変らず維持される場合と意味づけなどが変容する場合があるが、後者ではそうした意味づけの正当性を何が担保しているのかということ。集合的記憶には下から積み上げられていく側面と、上からの枠が与えられる側面がありうるが、鈴木報告の事例についてはどうかという点。慰霊団の出発に際して「レジャーではない」という団長の注意喚起(鈴木報告)は、むしろレジャー化している現状があるはずだが、しかしグアムやサイパンなどの場合と、パプアニューギニアやミャンマーでの場合には事情が異なる。観光化の度合いの地域的偏差を考慮する必要性、などである。

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 その後、司会の粟津氏より論点整理が行われたのち、会場から多くの質疑が行われ、報告者との間で活発な議論が展開された。今回はさまざまなジャンルから慰霊に関心を寄せる20名ほどの参加者を得、懇親会の場でも盛んに意見交換がなされた。

 主催者としても、今後も継続的に研究会を開催していくことの必要性が感じられた盛況ぶりであった。

                                     (西村明)

2014年2月 5日 (水)

「戦争死者慰霊の関与と継承」研究会のお知らせ(2014/3/16@國學院大)

昨年度後半より、代表者の都合により、なかなか研究会の開催ができずにおりましたが、下記の要領で来月研究会を開催する予定です。
ご関心のある方はぜひともご参加いただけましたら幸いです。なお、今回は國學院大學研究開発推進センターの研究事業「昭和前期における神道・国学と社会」との共催というかたちとなります。
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「宗教と社会学会」研究プロジェクト「戦争死者慰霊の関与と継承」研究会・國學院大學研究開発推進センター研究事業「昭和前期における神道・国学と社会」
日時:
2014年(平成26)3月16日(日)14:00~17:40
場所:
國學院大學渋谷キャンパス、学術メディアセンター棟5階、会議室06
(東京都渋谷区東4-10-28、アクセスマップhttp://www.kokugakuin.ac.jp/guide/access_shibuya.html)
タイムテーブル・内容:
14:00~15:10 報告1 鈴木卓(米デニソン大学・文化人類学)
  「記憶創りの旅路:民間人引揚者、戦死者遺児、遺骨収集者にとっての北マリアナ諸島」(仮)
15:10~15:20 休憩
15:20~16:30 報告2 西村明(東京大学・宗教学)
 「戦地慰霊・遺骨収集をめぐるパフォーマティブ・メモリー―金谷安夫氏の8ミリ作品「姿なき墓標」(テニアン、昭和51年)、「草むす屍」(サイパン、昭和59年)の上映とともに」
16:30~16:40 休憩
16:40~17:00 コメント 中山郁(國學院大學)
17:00~17:40 全体討論
司会 粟津賢太(南山宗教文化研究所)
研究会終了後、会場近辺にて懇親会を予定しております。
研究会および懇親会への参加ご希望の方は、当日の資料準備等の都合もございますので、事前に西村(aquillax@gmail.com)までご連絡をお願いいたします。

2012年6月30日 (土)

国際シンポジウム「戦争の記憶と継承-記念館・教育・観光」について

下記の要領で国際シンポジウムを開催します。28日のパネルは参加自由ですが、29日のラウンドテーブルと知覧巡検は人数の制限がございます。参加ご希望の方は西村までご連絡ください。

【スケジュール】
7月28日(土)
 14:00~17:30 シンポ(パネルディスカッション)@鹿児島大学稲盛会館
http://www.kagoshima-con.or.jp/facilities/article.php?id=31
7月29日(日)
 9:00~12:00 シンポ(ラウンドテーブル)@鹿児島大学国際島嶼教育研究センター会議室
http://cpi.kagoshima-u.ac.jp/introduction/mapandaccess.html
 12:00~18:00 知覧特攻平和記念会館巡検(希望者のみ、大学よりマイクロバスにて移動、途中で昼食)

【内容】
1.シンポ(パネルディスカッション、公開)
主催:日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究B)・「宗教と社会」学会プロジェクト
「戦争死者慰霊の関与と継承に関する国際比較研究」(研究代表者西村明)
国際シンポジウム「戦争の記憶と継承-教育・観光・記念館」

*パネリスト等詳細は添付のポスターを御覧ください。(現物をご希望の方には郵送しますのでご連絡ください。
印刷版はデザインが異なります。)

2.シンポ(ラウンドテーブル、ゲスト・メンバー以外は使用教室の都合で参加者を限定します。参加希望者はご連絡ください。)
司会:村上興匡(大正大)
発表者:粟津賢太(南山大)・田村恵子(オーストラリア国立大)・西村明(鹿児島大)
コメンテーター:矢口祐人(東京大)

*29日午後は知覧特攻平和記念会館へ巡検の予定です。バスで移動しますが、人数に限りがございますので、参加希望者は西村までご連絡ください。

【宿泊】
特にこちらで手配をいたしませんので各自でご予約ください。鹿児島中央駅近辺が便利だと思います。
(市電、タクシーで鹿児島大に向かう際には駅構内を通り抜けて東口からです。)

ご不明な点は、お問い合わせください。

西村明
鹿児島大学法文学部
aquillax@(半角にしてください)leh.kagoshima-u.ac.jp

ポスター画像をクリックすると拡大表示します。
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2012年1月24日 (火)

第5回研究集会のお知らせ~2012年3月3日(土)@奄美大島

下記の要領で、第5回研究集会を行います。今回は、前日にエクスカーションも行いますので、ご関心のある方はぜひ奄美大島まで足をお運びください。

「戦争死者慰霊の関与と継承に関する国際比較研究」(科研費基盤(B)、「宗教と社会」学会研究プロジェクト)第5回研究集会

○日時:201233日(土)13時~17

○場所:鹿児島県立奄美図書館4階第1研修室(鹿児島県奄美市名瀬古田町1番1号)

○スケジュールについて

13:00 開会挨拶

13:0514:25北村毅(早稲田大学琉球・沖縄研究所客員准教授)「戦跡を巡ること、戦争を語り継ぐこと ─沖縄戦帰還兵と家族の実践を事例として」

14:4017:00キース・L・カマチョ(カルフォルニア大学ロサンジェルス校アジアン・アメリカン学科准教授)「記憶する権利―マリアナ諸島における戦争記憶とその暴力」

(カマチョさんの発表は英語で行われますが、逐次通訳がつきます。)

17:00 閉会挨拶

18時より近くで懇親会を開催予定です。

○エクスカーションについて

研究集会前日の32日(金)には、奄美大島・加計呂麻島の戦跡や慰霊施設(奄美大島要塞司令部跡、用安弾薬庫跡、呑之浦海軍特攻隊震洋艇基地跡・島尾敏雄文学碑、安脚場戦跡公園など)をめぐるエクスカーションを企画しております。

日程:

9:00ホテルウェストコート奄美集合

午前中、瀬戸内町郷土館にて戦跡の概要のレクチャー、奄美大島要塞司令部跡等の巡検

11:40古仁屋港よりフェリーかけろまにて加計呂麻島へ渡航、現地で昼食

午後、呑之浦海軍特攻隊震洋艇基地跡・島尾敏雄文学碑、安脚場戦跡公園等を巡検

18:05瀬相港より古仁屋へ

19:30頃ホテルウェストコート奄美到着予定

○参加方法について

どなたでも参加いただけますが、事前に下記内容について、研究代表の西村までメールにてご連絡ください。エクスカーションは、参加人数次第で1000円から2000円の交通費負担(フェリー代、レンタカー代)をお願いする場合があります。

メールアドレス:aquillaxleh.kagoshima-u.ac.jp(@を半角に変換してください)

32日エクスカーション参加(有・無)

33日研究集会参加(有・無)

33日懇親会参加(有・無)

○アクセスについて

奄美大島空港へのフライトJALJAC)は、羽田・伊丹・福岡・沖縄より11往復の直行便のほか、鹿児島より8往復便が出ていますので乗換が便利です。また鹿児島新港よりフェリー(マルエーフェリー、マリックスライン)もあります(約11時間)。

2011年9月19日 (月)

第4回研究集会を開催しました。

 去る9月11日(日)14時から18時近くまで、國學院大學学術メディアセンター5階会議室06において「戦争死者慰霊の関与と継承に関する国際比較研究」第4回研究集会を開催しました。今回は、國學院大學研究開発推進センター「慰霊と追悼研究会」、ならびに「宗教と社会」学会「戦争死者慰霊の関与と継承」プロジェクトとの共催でした。

 以下の2名のゲストスピーカーをお招きし、充実した発表・質疑が行われました。

ミャッ・カラヤ(Myat Kalayar、長崎短期大学英語科准教授)
「慰霊巡拝がもたらす日緬友好の現状」

M.G.シェフタル(Mordecai George Sheftall、静岡大学情報学部社会科准教授)
"Formal kamikaze memorialization in the early postwar period"

 ミャッ・カラヤ氏の報告では、まず、ミャンマーの基本情報や第2次大戦におけるビルマ方面の戦闘の概要が説明され、その後、ミャンマーの特にメッティーラ(メイクテーラ)市における慰霊巡拝と国際交流の様子について、ミャッ・カラヤ氏自身の関与も含めて紹介された。

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 1969年にミャンマー政府の外国人入国許可を受けて巡拝旅行が計画されるようになり、1996年のビジット・ミャンマー・イヤーにおける団体客入込数の実に85%が慰霊巡拝のために訪問しているという事実や、慰霊のためにパゴダ(仏舎利塔)の形式で慰霊塔が建立され、それがミャンマーの仏教徒によって受け入れられている事実などが指摘された。

 慰霊団は、慰霊塔の建立のほか、学校建設や浄水施設の寄贈など、戦時中の恩返しとして草の根の国際貢献が行われており、1987年に世界平和パゴダを建立したアジア仏教徒協会(ABBA)の活動や、国際協力の会(MIS)の活動が、こうした慰霊との関係から起こってきている。また、ミャッ・カラヤ氏自身も慰霊団の人々から日本での就学支援を受けたこと、さらにはそれに対する恩返しとして自身でミャッ・カラヤ奨学金を設立し、旧戦地出身の留学生の支援にあたっていることなどが紹介された。

 このように慰霊巡拝が次世代に及ぼしているダイナミックな展開についての報告を受け、学校建設の詳細や、慰霊団に対する現地の否定的イメージの有無、ミャンマー僧の慰霊への関わりなどについて活発な質疑応答がなされた。

 続いて行われた、M.G.シェフタル氏の報告では、まず、自身がちょうど10年前の9・11の同時多発テロ事件の「カミカゼ」報道に違和感を感じたことから特攻の研究を始めたことが紹介された。続いて、特攻の歴史的背景に触れ、Terror Management Theory(存在脅威管理理論)にもとづいた理論枠組みについて説明がなされた。

Rimg00902  人々にとっての象徴的宇宙であり世界観であり日常的に意識しているものごとであるところの生活世界において、人々の日常的行動の範囲を管理しているのが言説であり、トラウマによって破壊された自尊心とライフワールドを確保するために、他者のせいにして事故の一部を分離して外部化するCORF(Cutting Off Reflected Failure)について説明された。

 そうした理論的枠組みを元に、戦没特攻兵の慰霊施設である世田谷観音内の「特攻観音堂」をめぐる動向が事例研究として報告された。「白蓮社」の関口真大が法隆寺の夢違観音のコピーを108体作製し、それが陸海軍の戦没特攻兵の慰霊のために1952年に護国寺に安置されたこと、その後1955年には世田谷観音に移され、別のコピーが知覧にも安置されたことをはじめ、戦後社会における特攻の神話化に関するさまざまな言説が紹介された。

 質疑応答では、「言説」概念の妥当性やCORF理論のとらえ方などが会場から指摘され、活発に議論された。

 *次回の第5回研究会は、研究代表の西村が滞在中の奄美大島において3月3日(土)に行う予定である。現在確定しているゲストスピーカーは、『死者たちの戦後誌―沖縄戦跡をめぐる人びとの記憶』(御茶の水書房、2009年)の著者である北村毅氏(早稲田大)と、Cultures of Commemoration: The Politics of War, Memory, and History in the Mariana Islands(University of Hawaii Press, 2011)の著者であるKeith Camacho氏(UCLA)である。併せて奄美の戦跡をめぐるエクスカーションなども行う予定であり、詳細決定次第、本ブログのほか、関連学会のHPやMLでも連絡予定である。

2011年8月11日 (木)

5月研究会の内容が雑誌『SOGI』に掲載されました。

葬儀業界誌『SOGI』第124号に、5月28日開催の研究会「慰霊をめぐる人々とその空間」についての紹介記事が掲載されました。(記事をクリックすると拡大します。)


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2011年8月10日 (水)

研究会のお知らせ~2011年9月11日(日)@國學院大

次回の研究会の開催をお知らせします。
詳細は下記のとおりです。
参加希望の方は、事前に西村までご連絡下さい。

○「戦争死者慰霊の関与と継承に関する国際比較研究」第4回研究集会
(科研費基盤(B)、研究代表者西村明)
(なお本集会は、國學院大學研究開発推進センター「慰霊と追悼研究会」、
ならびに「宗教と社会」学会「戦争死者慰霊の関与と継承」プロジェクトとの共催です。)

○日時:2011年9月11日(日)14:00-17:30
○場所:國學院大學学術メディアセンター5階会議室06
國學院大學渋谷キャンパスアクセスマップhttp://www.kokugakuin.ac.jp/content/000024201.pdf
キャンパスマップhttp://www.kokugakuin.ac.jp/content/000024267.pdf

○報告者:
ミャッ・カラヤ(Myat Kalayar、長崎短期大学英語科准教授)
「慰霊巡拝がもたらす日緬友好の現状」(仮)

M.G.シェフタル(Mordecai George Sheftall、静岡大学情報学部社会科准教授)
"Formal kamikaze memorialization in the early postwar period"
(英語での報告ですが、パワーポイントを使い、日本語交じりの平易な英語です。質疑は日本語で行われます。)

○連絡先:鹿児島大学法文学部人文学科 西村明(宗教文化論)
〒890-0065鹿児島市郡元1-21-30
電話& Fax: 099-285-8902
email: aquillax@leh.kagoshima-u.ac.jp

2011年6月12日 (日)

「宗教と社会」学会プロジェクトに承認されました。

2011年6月11日に開催されました「宗教と社会」学会2011年度総会(@北海道大学)において、学会プロジェクトとして承認されました。当座2011年度から3年間の予定で進めます。今後、広く参加メンバーを募りつつ、研究を深めていきたいと思います。プロジェクトへの参加希望の方は代表連絡先のメールアドレス(aquillax@leh.kagoshima-u.ac.jp〔@を半角に換えてください〕)までご連絡ください。
以下は、趣意書(一部改編)です。

「戦争死者慰霊の関与と継承」プロジェクト 趣意書
【名称】「戦争死者慰霊の関与と継承」プロジェクト
【略称】「慰霊関与」プロジェクト
【発起人】西村明(代表)、粟津賢太
代表連絡先:西村明(鹿児島大学准教授)
〒890-0065 鹿児島市郡元1-21-30 鹿児島大学法文学部
email: aquillax@leh.kagoshima-u.ac.jp(@を半角に換えてください)
【目的】
  慰霊をめぐる研究は、1970年代以降、特に靖国神社や忠魂碑といった慰霊施設の性格をめぐる議論から徐々に活発となり、戦後50年を過ぎると、歴史学・民俗学をはじめ、具体的な事実の掘り起こしも進んだ。さらに近年は、戦争に限らず、広く慰霊現象への注目が若手研究者の中にも起こってきている。しかしながら、それらの慰霊研究の現状は、いまだ十分に宗教研究の主題としての深化が図られているとは評し難い段階であると言える。例えば、これまで十分に議論の俎上に乗せられていないテーマの一つとして、戦争死者とつながりの深い戦友や遺族といった直接的関係者ではない、次世代や第三者の慰霊への関わりを挙げることができる。こうしたテーマは、アジア・太平洋戦争から65年が過ぎた現時点において社会的にもアクチュアルなものであるとともに、宗教体験や死者の記憶の継承・伝播という宗教研究史上のテーマとも類比と接続が可能なものである。
そこで、本研究プロジェクトでは、戦争死者慰霊の関与と継承の問題に焦点を当て、国際比較の視点も導入することによって、研究の深化を図ることを目的とする。
 本研究プロジェクトでは、戦争死者慰霊のテーマに関心を抱く日本国内を対象とする研究者をはじめ、日本の事例にとどまらず海外の研究を行う国内外の研究者も招いて、国際的な研究ネットワークを作ることも目的としている。さらには、戦争死者慰霊にとどまらず、広く慰霊や記念行為に関心を抱く研究者にも参加を呼び掛けることで、慰霊研究、死者儀礼研究の進展に寄与せんとするものである。以上のような目的のもと、研究プロジェクトチームを「宗教と社会」学会内に設け、関心を共有するメンバーを募って調査研究を実施して、成果を広く公開することとする。

【領域】
 本プロジェクトでは、上記の目的の下、具体的に以下の二つの問題系をサブテーマとして設定する。

A戦争死者慰霊の世代間継承の展開
 従来の戦争死者慰霊研究では、靖国神社や招魂社の成立や戦死者慰霊の形態の源流などを辿るような単線的な系譜理解がほとんどであり、戦後の多様な慰霊形態へとつながる複線的系譜理解はいまだ十分ではない。実際には同じ死者を対象とする慰霊であっても世代間の継承の過程で多様な展開を見せている。一定の時間の幅のもとで動態的に把握することによって、現在の慰霊の在り方を規定し、構成するいくつかのパターンを抽出することが可能となるだろう。
Bサードパーティーの慰霊関与と、当事者・直接関係者との関係構築の技法
 慰霊の現場は、死者と直接的な関係を有する戦友や遺族、戦争体験者等の当事者・直接関係者と、直接的な関係性を持たない形で慰霊への関与を行う僧侶等の宗教的エージェント、観光業者・行政・NGO等の世俗的エージェント、当該地域の非体験者等のサードパーティーから構成されるが、サードパーティーが慰霊の形態に及ぼす影響や当事者との関係性についてはこれまでの研究では断片的な言及に止まっている。世代間の継承だけでなく、こうした同時代的なサードパーティーの関与も視野に入れることによって、慰霊の持続と変化をもたらす要因についてより明確な理解が可能となるだろう。
 
【計画】
・プロジェクト期間:2011年6月から3年間(必要に応じて期間延長)
・原則、年3回以上の研究会を実施し、研究発表、調査打ち合わせ、調査報告を行う。
・文科省科研費などを申請活用し、共同で調査研究を実施する。
・国際的な研究動向も視野に入れ、戦争に限らない慰霊や記念行為の研究を広く社会へ公開することについて具体的な検討を行う。
・研究成果を、「宗教と社会」学会をはじめとする各種研究発表会、インターネットサイト、出版などによって公開する。

【研究会の参加予定者(発起人の二人を除く、2010年11月段階)】
森謙二、村上興匡、土居浩、清水克行、中山郁、ベン・ドーマン、小林奈央子

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